『チーム★アメリカ/ワールドポリス』

 「夏休み公開なのに、18禁になってしまいました…」宣伝会社の方のあいさつが、あまりにしょぼくれて悲しそうだったので、場内にクスクス笑いがもれる。しかしなー、見せられないでしょこれ。史上初? 人形同士のセックス・シーンなんか、杉本彩にだってたぶんできないもん、下品すぎて。なぜなら人間である彩様は、どんなに服を脱いだとしても「見るからには私のこと『美しい』といわせなきゃ気がすまない」というプライドがあるが、人形にはそれがない。人形というのは前提がすでに恥知らずである。そこからこの映画はスタートしている。

 監督自身がいっていることだが、「これはブッシュ叩きの映画じゃないよ」。「何もかも叩いてるんだ」。まったくその通りで、もう何が何やら。「世界の警察」として秘密組織されたチーム・アメリカの目下の敵は、ハリウッドの非戦俳優協会FAG(おかまの意がある)だが、この非戦協会は、世界平和を維持するため、北朝鮮が主催するイベントに手を貸してしまう、という設定なので、結局どっちが平和だか軍事だかわからなくなってくる。映画はブッシュを叩き、キム・ジョンイルを叩き、ハリウッド・システムを叩き、非戦を唱えるショーン・ペンを叩き、マイケル・ベイが作ったパール・ハーバーを叩き、ベン・アフレックが演技力がないことを叩き(←ほとんど映画のストーリーと無関係にこういう笑いが入ってくる)世界中を叩いてしまう。
 
 プレスのトップにこのような注意書きがあって、(次のような方はご注意ください、1禁止用語に眉をひそめてしまう人、2、心臓の弱い人 3.ブラック・ジョークについむっとしてしまう人 4 挑発に乗せられやすい人 )わたしは1とか3に該当するし、「サウス・パーク」も一部好きになれない人だったので、大丈夫かな? と少し心配だった。しかし、待ち時間の間にオリジナル・サントラの歌詞カード「America, Fuck Yeah!」を読んでいたらそれだけで力がへなへなと抜けてしまい、映画を見る頃にはこの映画にすっかり「いいようにされる」準備が出来上がってしまっていた。つまりこの映画は、叩きすぎて、結局何も叩いていないのである。Aを叩いた後、Aに敵対するBを同じように叩いてしまうから、AとBは結局両方とも同じだけへこみ、AとBにダメージの違いは見られない。叩いてはいるが、追い詰めてはいない。そんなに痛いところをついているわけでもない。そもそも「America, Fuck Yeah!」って、肯定だか否定だかわかんないじゃない。

 キム・ジョンイルが、「ボクは寂しい、ボクは孤独」という歌をうたうくだりがあるが、これなど、とても叩いているようには見えないものね。でも、本人は激怒するのだろうか。石原慎太郎だって、田中康夫に「心の中に大きな恐怖を抱えている人だ」といわれて(図星だってみんなわかってるのに)「俺の中のどこに恐怖があるというのか、失敬な」と怒ってたから、やっぱりムリかな。
 ところで、キム・ジョンイルの歌う「I feel lonely」、どう聞いても「I feel Ronely」に聞こえる。韓国語でもLとRは間違いやすいのか、それとも日本語と混同しているのか。ちなみに北朝鮮、アメリカ以外に一番よく出てくる国はやっぱり日本で、日本ももちろん叩かれてます。
 
 わたしはとにかくもう、人形の精巧な造りのトリコになった。この人形、身長が大人の人間のひざまでぐらいで、ということはスーパー・ドルフィーよりちっちゃいのだが、衣装のつくりがめちゃくちゃ凝ってる。人間の服にだってまず入ってないカットソーに胸ダーツとか入ってるんだよねー。

5月30日公開
7月30日より、シネアミューズWEST,シネリーブル池袋他で公開
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by ropponguimovie | 2005-05-31 00:43
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