人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『マイアミ・バイス』

 突然ですが、この稿の中に出てくる「ルールズ」というのはこの本 のことです。(画像が表示できない…)

 マイケル・マン監督にとって女はいつも「主人公の泣きどころ」なんだと思います。今回は主人公がふたりいるので、その泣きどころぶりも対照的に作ってあります。ジェイミー・フォックス演じるリコは同僚のトルーディを大切にしていて(ステイ型)、当然、トルーディは敵に拉致されて危ない目に合う。一方、フロー型のソニー(コリン・ファレル)が恋に落ちるのは、麻薬捜査官として潜入した先の取引の相手で、中国系キューバ人のイザベラ。うおー、危ない危ない。もうこれでわかっちゃうようなストーリーですが。

 いったい誰のディレクションか知りませんが(こういう演出をつけるのが、監督の仕事なんですか?)ふたりのメイクラブの仕方まで対照的で。リコとトルーディはトルーディも情熱的なブラック・ヒスパニックらしく、リコがシャワーを浴びているところに入ってきたりするけれど、基本的にはリコが終始リードするスタイル。ずーっとリコが上になってるから、カメラはずーっとリコの背中が動くのを写してる。(この背中は黒くてすべすべしてて、本当にきれい)。その上になってる背中に、彼が彼女を大事にしてるっていうところがちゃんとにじませてある。
 一方、ソニーは…、まあ、コリン・ファレルですから、いかにも火遊びっぽいんですが、女も女。ソニーが上になったりなんかしません。あのー、あの形、なんていうですか? 男も女も座ってて、女が上になってるやつ(ものを知らなくてすみません…)こう、女がのけぞるのがシーンの見せ場であるようなスタイルです。
 そしてこの女というのがコン・リーですよ。うーん、私、今まで見たなかでこのコン・リーが一番好きかも。中国人だけどラテン人だっていうこの役を得て、感情を全部さらすことが大切な役ですから、コン・リー、とても生き生きして見える。9歳年下のしかもハリウッドの新暴れん坊・コリンを相手に(ソニーは「セクシーな女」にひかれていて、「年上の女」にひかれたという感じではない)堂々たるセクシーぶりです。

 プレスに「かつて、これほどまでに「リアル」に描かれた潜入捜査があっただろうか」って書いてありますけど、ボーシットですよねえ。リアル・ワールドではこんなふうに女はからまないし、実は、からまなくてもこの映画は作れたと思います。でも、マイケル・マン監督はやっぱりこういうふうにからめてくる。泣きどころになってくる。それは何故?

 マン監督は確認するまでもなくいっつも男くさい映画ばっかり撮ってるわけだけど、その中にあって女は、男くさい主人公達のアイデンティティを補完する最後の1ピース、という役割がことさらに強いと思います。だからひかれちゃうし、彼女達が死んじゃうととても困る。「ルールズ」は、男が自分のアイデンティティの最後の1ピースになっててそれを探してて、男の側からものが見れなくなってる女が読む本(ひどい?)なんですが、こっち再度から見ると、彼らだってやっぱり、まったく同じ面があるんだなあ、と、なんか目が開けた気がしました。

 そういうわけで、この映画は、麻薬捜査の映画ではなくて、その女との関係を通してふたりの男がどう変わっていくかを描いた映画なので、対照的な男達のラストは、女とのラストも対照的です。コリンとコン・リーのラスト、とてもよかったな。

9月2日、日劇1他にて公開

1票、お待ちしてます♪
にほんブログ村 映画ブログへ
by ropponguimovie | 2006-07-29 20:03
<< 『イノセント』 『ハードキャンディ』 >>