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今週、いちばん癒せる映画 vol.22『ゲゲゲの鬼太郎』

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 今週のオススメは…
 大本命の『バベル』を抜いて『ゲゲゲの鬼太郎』、そして『ストリングス』も捨てがたいので、またまた2本発行することにします。
 
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 忘れてた! 今週は『スパイダーマン3』もあるんだけど、これは日本での公開の方が早いので、今アメリカにいる私は5月4日まで見られません。だからこれは除外。


 さて、『ゲゲゲの鬼太郎』なんですが…。
 脚本がものすごくよくできてます。(旅先なので手元に資料がないんですが、2年ぐらいかかったらしい)。
 そしてこの映画、世界を揺るがしたブロックバスターの脚本パターンを、きれいに踏襲しています。


 その映画というのは…。何を隠そう、『タイタニック』。


 「自由で背負う者のない王子様が、背負うものだらけでがんじがらめのお姫様を助け、彼女の記憶に生き続けて去っていく…」


 というパターン。


 あれ? これ、もう一つ前例があるぞ?


「自由で背負う者のない永遠の少年が、背負うものだらけですっかりせちがらくなった少女と冒険をし、
 彼女の記憶に残って去っていく…」


『ピーターパン』だ、ピーターパン。


 『ゲゲゲの鬼太郎』は、観客の中でも「弟のいる長女さん」のツボをひときわつく映画かもしれません。
 今回の映画のヒロイン(井上真央が演じてます)と、『ゲゲゲの鬼太郎』のウェンディには小さな弟がいる、親があんまり頼りにならない、という共通点があります。
 『タイタニック』のローズには弟はいませんが、母親が娘に依存していて家族の運命を背負っています。


 男の子(boy)が小さいときから家族の運命を背負った場合、小さいときから男(man)になることを強いられます。
 しかし、女の子(girl)が小さいときから家族の運命を背負うと、こちらも男(man)になってしまうのですね。
 小さいときから女郎に売られた少女の物語(『さくらん』が良い例)が、成功女郎の道を進み始めると、それは、「男から愛される」ではなく「男に愛させる」話になってしまうのはそのせいだと思います。
 

 『ゲゲゲの鬼太郎』のヒロイン(すみません、資料が手元になくて名前がわかりません)は、早く母親をなくし(早く母親役をやると現実的になる)、父親まで原因不明の病気で死んでしまい、残されたのは小さな弟のみ。そのうえ外国から帰ってきた得体のしれない親戚のおじさんが、自分たちを狙っている気がする。。。
 すっかり現実的になって当たり前。


 そんなとき、ふと彼女を助ける役回りになるのが、霊界の貴公子、ウエンツ瑛士演じる鬼太郎なのです。


 ここで、ウエンツ瑛士が本当にすばらしいです。
 何が素晴しいって? あの顔ですよ、顔!
 だって、他の妖怪達は(間寛平を筆頭に、中村獅童、西田敏行、室井滋、大泉洋といったアクの強い面)特殊メイクしてるのにウェンツだけ「素」なんですよ! つまり彼の場合だけ、「美しいことが異形」だというわけです。
 この「美しいことが妖しいこと」という名に恥じなかったのは、最近では、『ニュースの天才』のヘイデン・クリステンセンぐらいじゃないでしょうか。ウェンツの演技力をあれこれいう人もいるみたいですが、じゃあ、他の顔を挿げ替えてみろ、許さないぞ! っていう感じ。


 そういえば、『タイタニック』のときのレオナルド・ディカプリオも、本当に美しかったですよねー。あのタキシードを着た晩餐会のシーンでは、息を呑みませんでしたか?
 この、「現実離れした美しさ」=花、は、本当は、女の子が女になるときに、自分で身に着けていかなければいけないのですが、もちろん、ウェンディ型の苦労人の女の子には、そんなもの身につくはずがありません。
 反対に、ウェンツや『タイタニック』の頃のディカプリオや、『ニュースの天才』のヘイデンたちは、少年(boy)ではないのですが、男が成熟し、社会的責任を背負うすにしたがって身に着けていく「傷」「苦味」「渋み」みたいなものがないのです。だからこそ彼らは「異形」なのですが、少年ではないのに「女」womanになってしまったような華やかさを身に着けているわけです。


 『ピーターパン』『タイタニック』『ゲゲゲの鬼太郎』型の物語は、ミツバチが花に花粉を運ぶように、ヒーロー達が、このままでは女として人生を謳歌できずに散ってしまいそうなヒロインに、自分の花粉を分けてやる話、ということができます。
 ヒロイン達は、自分の人生が秘めている可能性に気がつき、自分の感覚をより開かせ、自分の人生を思いっきり生き始めます。


 しかしそのとき、男であって男でないヒーロー達は、ヒロインと結ばれる運命を放棄しなければいけない壁にぶちあたります。社会的責任を負わないと男は、物語のうえでは、男ではありません。それを背負わない者は「現実社会で男として認められる」という通過儀礼を受けられないのですね。


 しかしだからこそ、彼らは、ヒロインの心の中で永遠に生き続けます。


 ここに、男の観客の泣きどころもあるかもしれません。なぜなら、現実の男は、ピーターパンやジャック君やゲゲゲの鬼太郎と違って、「社会的責任を背負う」という通過儀礼を通過して、今、この場所に存在するからです。ウェンディやローズと結ばれることはできませんが、あなたの隣りには現実の生活を共にする伴侶がいて、ふたりの間に生まれたかわいい子どももいることでしょう。
 その甘酸っぱいギャップに浸ってください。


 ところで、冒頭に、昔なつかしの『ゲゲゲの鬼太郎』のテーマソングが流れるのですが、
「楽しいな、楽しいな♪」のあとが、「オバケにや学校も、試験も何にもない」じゃなくて
「オバケにゃ会社も、仕事も何にもない」に歌詞が変わってました。
 うーむ、社会人に訴えてるな~。そう、社会的責任を背負ってる社会人に。


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「今週 いちばん癒せる映画」!」 vol.22  発行47部
出典を明らかにしていただければ、無断転載は可能です。
2007.4.27 発行
発行人・石塚とも
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by ropponguimovie | 2007-04-27 14:25 |
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