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今週、いちばん癒せる映画vol.15『ホリデイ』

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 今週は…。


『アルゼンチンババア』『ひいろ』『ユアン少年と小さな英雄』なども悪くないですが、
 個人的体験と重ねて(笑)『ホリデイ』にしました。


 実はこの映画、昨年のクリスマスに単身LAを訪れたとき、ちょうど公開中でした(これはクリスマス映画なのです、今日本でやるのは、ちょっと損です)
 

 そのときには見ないで、日本に帰ってきてプレス試写室で見て、「あー、ロスで見ないでよかった」と思った。


 なにしろ、恋人にふられてクリスマスに楽しい予定のない女性ふたり(イギリス人とアメリカ人)が、クリスマス期間中、家を交換し合う、というお話。ひとりで見たら、いたかったろーなー(笑)。


 しかも、キャメロン・ディアスはハリウッドで成功している映画編集者(ベルエアあたりに立派な自宅軒オフィスをもっている)なので、出てくる風景も妙にだぶる…。とほほ。。。


 さて、この映画で興味深いのは、「ハウス・エクスチェンジ」といって、家ごと交換してしまう、というシステムです。いったい、「貴重品とかどこにしまうんだろう?」その前に、「ちらかった家を他人に見せるなんて!」とびっくりしてしまうのですが、他の映画評論家の方のサイトによると、欧米ではとてもポピュラーな習慣で、インターネットができてからは、ますます盛んなのそうです。


 古典の物語に「都会のねずみと田舎のねずみ」というのがありますが、この映画でも、主人公のふたり(キャメロン・ディアスとケイト・ウィンスレット)は、家を入れ替えるだけでなく、人生すべてがとっかえされてしまいます。そして、その結果、もしもこのようなシチュエーションでなければ決してステキには見えなかった「ごく普通の男性」たちと恋愛をしていく。
 片方は見た目はクールじゃないけど、気さくな男性(ジャック・ブラック)。もう一人は、見た目は超クールだけど、シングル・パパ(ジュード・ロウ)。その相手は「王子様」ではない。だからこそ、見ていて「地に足のついた恋愛」という安心感があります。
 まあ、ジュード・ロウの容貌をして「ごく普通の男性」というのは無理がありますが…(笑)

 
 イギリスの片田舎からやってきたケイト・ウィンスレットの友人になる、リタイアが近づいたハリウッドの老脚本家、も、いい味です。こんなふうに、この映画では、ハリウッドの映画の製作者(俳優ではなく)たちの生活が描かれていて、その点も興味深いです。


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「今週 いちばん癒せる映画」!」 vol.15  発行35部
出典を明らかにしていただければ、無断転載は可能です。
2007.3.23 発行
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今週、いちばん癒せる映画vol.14『デジャヴ』

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 今週のイチオシ映画は、トニー・スコット監督の最新作『デジャヴ』です。
 この映画は、試写室では、かなり評判がよく、1回満席で入れませんでした。
 他に今週は、『フランシスコの二人の息子』もおすすめです。

 さて、『デジャヴ』の監督はトニー・スコット、製作はジェリー・ブラッカイマー、主演はデンゼル・ワシントン。
 意外でしょ、ジェリー・ブラッカイマーの映画で癒せるなんて(笑)。
 しかし、冒頭でも書きましたが、試写室はとても盛り上がっていて、見た後のカタルシス(=こころの浄化作用)が見た人の間で共有される気持ちよさがありました。映画の法則に従って、丁寧に映画を作ると、すごい癒し感が得られるという好例だと思いました。

 デンゼル・ワシントンが演じるのは、軍事学校の卒業式の船を爆破されたテロ事件を担当する捜査官。しかし、捜査を進めていくうちに、彼は不思議な現象=deja vu (今までに見たことがあるような感覚)に遭遇していきます。やがて彼は、FBIとの協力によって、過去の姿を映し出せる装置を使うことができるようになります。そして彼は最後、テロを予防するため、この装置を使って、自ら過去に飛び込んでいきます。
 
 さて、wikipedia日本版のジェリー・ブラッカイマーの項を読むと、このように書いてあります。

【彼の製作した映画のほとんどは、単純な筋書きや凝った特殊効果の導入による派手なアクション、大ヒットしているポップ・ミュージックを起用したサウンドトラック、ありえないほどテレビ映りのよい俳優たちの起用を特徴としている。このため彼の映画は派手なオープニングと見た目のわりに無内容だとして全米の映画評論家からは酷評されているが、アメリカだけでなく世界で多くの観客を集め、収益的には大きな成功を収めている】

 もう、けちょんけちょん(笑)。

 しかし、彼の映画の、ここに書いていない大きな特徴は「犠牲」をうまく扱っているということだと思います。
『アルマゲドン』を筆頭として、『ヴェロニカ・ゲリン』『パール・ハーバー』『トップ・ガン』『キング・アーサー』などは、犠牲の痛みをともなう映画です。

 「英雄の定義」って何かご存知ですか。英雄というのは「自分を犠牲にする」ということが必要条件なんです。(現実にそう、ということより、「物語の中の英雄の定義」と考えてください)。それは美しく、悲しく、信念があり、誰もができないけど誰もが一度は憧れる生き方です。ジェリーはそれを生き方の信念ではなく、「エンタテインメント」「ヒット映画の法則」として作っているように感じるから、叩かれちゃうんですけど(笑)

 本作『デジャヴ』も、(ネタバレ禁止令が出ているのであまり詳しくかけませんが)、結末近く、主人公は、大きな自己犠牲を伴う選択をします。しかし、そこにはそのリスクを払ったことを上回る、大きな宝物を得て物語りは完結することになります。
 この「何かを捨てて、違う宝を得る」というこころの作業が人間には気持ちいいのです。
 今回は、その機能が、ものすごくうまくいってます。(『アルマゲドン』とか『パール・ハーバー』みたいにわざとらしくないんですよ)。デンゼル・ワシントン演じる誠実な刑事に見る人はみな、感情移入するし、彼がある犠牲的な行動をしたときには皆、ものすごい痛みを伴う。そのあと、あっという展開が起こる。
 映画というのは多かれ少なかれみなこういう展開をたどるのですが、そこにダイナミックなストーリー構築や、彼とトニー・スコットお得意の大仕掛けがふんだんに盛り込まれているので、動かされる感情の幅も大きいのです。とても満足感があります。
 
 ちなみにもう一つ、ジェリー・ブラッカイマーは時代を読むのがうまいなあと思わされるところは、この船を爆破したテロリストの正体が、当然ながら(?)、イスラム系なんかではない、と、きっちり示しているところです。最初に爆破された船はアメリカ軍人が多数乗っていたので、最初は、そういう犯人像なの? と観客に疑わせておいて、やっぱり違う、という方向に持っていく演出もさすがです。何かにおびえた、世界の閉じた、周囲から見ると特にハンディキャップを背負っているようには見えない人間。そういう人間が、テロを起こすんだっていうことを、ジェリーはさらりと入れています。

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「今週 いちばん癒せる映画」!」 vol.14  発行32部
出典を明らかにしていただければ、無断転載は可能です。
2007.3.9 発行
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今週、いちばん癒せる映画vol.13『パラダイス・ナウ』他

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 今週は、他の週だったらイチオシ! という映画がたくさんあって、
評論家泣かせの週です。
『約束の旅路』『ラストキング・オブ・スコットランド』『サン・ジャックへの道』『絶対の愛』…

 そのうち、『約束の旅路』は、こちらに感想を書いていますので、よかったら見てください。
http://rmovie.exblog.jp/5936134/

 さて、今回の1本として選んだ『パラダイス・ナウ』、実は一昨日見た、すべりこみでした。

 なかなか時間が取れなかったのですが、ずっと気になっていました。
 試写状が、とても印象的だったのです。

 http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD10285/index.html

 こちらの写真を見ていただくとわかると思うのですが、『モッズ』っぽいというか、1997年のダニー・ボイル監督の名作、『とレインスポッティング』を思い出させますね。ちょっと、虚無的というか、生きること投げちゃってるというか。

 ところが、彼らは虚無的どころではないのです。「虚無」って、生きることが保証された環境の中で「生きることがむなしい」とかいってるから「虚無」なわけでしょ。ところがこのふたりはそもそも生きることが保証されていない。実は、この、ちょっとオシャレで、しかもハンサム(だ、と、私は思う)な二人が、実は自爆テロリストなのです。
 彼らが頭を丸め、ひげをそっているのは、ユダヤ教徒(っぽくも見えないけど、無宗教風? とにかくイスラム教徒に見えないようにする)として敵地に乗り込むため。このスーツの中に、腹巻みたいにぐるぐる巻きにした爆弾を巻きつけています。

 途中、恋人が出てきますが、彼女もとてもきれい。ヨルダンはイスラム国の中でも服装がそんなに厳しい国ではないので、彼女は髪を隠していないし、ボタンを二つあけたブラウス姿。途中、彼らの行為を敢然ととめようとする姿は、とてもりりしくてカッコイイ。「女性らしさの枠の中に押し込められたイスラム女性」のイメージを完璧に超えています。

 この映画は、自爆テロリストの決行前の48時間を描いているのですが、それが、政治的メッセージではなく、個人の人間的心情として主人公達に迫っています。

 それが、こういうスタイリッシュな映像に表れている気がします。
 つまり、この映画が、自爆テロリストの話である、というのは、「たまたま」なのですね。こういうキャラクター達を使って、まったく別のドラマを撮ろうと思えば撮れる。
 そこに、一種の救いがあるように見えるのですよね。

 話がちょっとユーモラスに描かれるところも、『トレインスポッティング』に似ています。胸にはりつけたテープの具合がうまくいかなくて、「べりっ」とはがすのですが、これが痛そう(笑)(あっちの男性は胸毛がいっぱい生えてるからね…)。
 しかし「今度からもっといいテープを使ってくれ」と文句を言うと「2度目はない」と、にべもない返事。笑えるようで、笑えないようで。

 『トレインスポッティング』は、仕事がない、という環境の中で、「死にたいけど死ねない」という感覚を抱えた若者達が、最後は、生の方向に向かうところで終わっています。そして、この映画は、「死にたくもないけど死なないといけない」という運命に巻き込まれた若者が、死なないようにとあれこれ試み、しかし、最後は…という構成になっています。

 生きる死ぬを、「政治」「国」といったシステムのレベルで語らず、あくまで個人のレベルで語っているところに、癒しというか、救いがあるような気がします。
 
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by ropponguimovie | 2007-03-09 22:32 |

今週、いちばん癒せる映画vol.12『パフューム ある人殺しの物語』

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 発行が1日遅れましてすみません…

 今週オススメの映画は、トム・ティクバ監督の最新作『パヒューム ある人殺しの物語』です。

 ちょっと関係ないところから入りますが(いつも?) 最近、実用書を読むのが楽しくてしょうがないです。

 人生全般にまつわる自己啓発から、「トップ営業レディのセールストーク」まで。

 最初のうち、「ハウツー本を読みまくりって、ださい?」と思ってました。
 しかし、ほどなくして、これは、素晴しい行為だ! と思い始めました。

 なぜなら、私は、これらの実用書を文学として読んでいる、ということに気がついたからです。「本人が書いている実用書は、へたな小説より『冒険物語』としてよっぽど面白い」と思っているのです。
 村上春樹が『羊をめぐる冒険』を書いたように、彼らは『セールスをめぐる冒険』『マーケティングをめぐる冒険』『結婚相手さがしをめぐる冒険』を書いているのです。

「物語の定義」って、ご存知ですか?

 いくつかあるのですが、よくできた物語の定義として、「物語は、痛みをともなって語られなければいけない」というのがあります。(参考文献「神話の法則 ライターズジャーニー」)
 体験者が書いたハウツー本って、この法則にのっているんですよ。自分の失敗がたくさん書かれているし、そもそも「自分の失敗も公開して、みんなに幸せになってもらおう」という発想そのものがかなり痛い。
 渡辺淳一が自分の経験を屈指して『愛の流刑地』を書いたように、みなさん、『金の流刑地』『結婚の流刑地』を書いてるわけです。
 いや、それが事実だという点で、それは、想像で補完している小説よりもっと痛い、となれば、実用書の方が面白いにきまってるじゃありませんか。

 世の中にこれだけ痛くて楽しいハウツー本があふれてくると、小説は、ちょっとやそっとのことで太刀打ちできなくなります。その「うそっぱちさ」が、実用書を上回る痛々しさを持っていないと、面白くない。

 そして、原作『パフューム』は、その、「実用書を上回る痛々しいうそっぱち」なのです。

 親の顔を知らずに育ったある少年には、誰にも真似できない才能がありました。それは、嗅覚が異様にすぐれているということ。彼はその才能を生かして香水職人になりますが、彼にはどうしても再現したい香りがありました。それは、昔、その匂いを好きになってしまったが、勢いあまって殺してしまった女の体臭です。人殺しを犯しても、彼に罪悪感はありません。それどころか、人は死ぬともうステキな匂いがなくなってしまうことが、悔しくてしょうがありません。
 そこで彼は、年頃の美しい娘を次々と殺し、そのなきがらから香料をとる、という荒業を始めます…。

 この映画の中では、この恐ろしいストーリーは前半部でしかありません。後半、この愛のかけらもないろくでなしの行動が、なぜか、周囲の人々に「愛」を及ぼしていく、という、妙というか、皮肉なところに、この話の特徴があります。

 さて、再び、実用(自己啓発)の話に戻ります。

 「こうなりたい」と願っていると、いつかその通りになってしまう、という話は、聞いたことがありますよね。
 反対に、「絶対にこうなりたくはない」と思っていても、やっぱりその通りになってしまいます。

 なぜでしょうか。

 それは、「こうなりたい」であっても、「こうなりたくない」であっても、そのときの感情の強さは、同じだからです。感情が大きくふれたときに、人の行動に影響を及ぼすのです。
 針が、プラスの方向に振れるか、マイナスの方向に振れるかは関係ないのです。問題は、その絶対値の大きさ、というわけです。

 この考え方でいくと、「人を愛している」か「憎んでいるか」という分け方は、できない、ということになります。
 愛にしろ憎しみにしろ、「どれだけのコミットを望んでいるか」=愛ということになるわけです。
 彼の、殺意というコミット欲は、それを他人に映したとき、愛というコミット欲に変わってしまうのです。自分が思っている世界観を他人が演じる「鏡の法則」というのがありますが、彼の鏡は、反転する、という奇跡が起こるわけですね。

 これは、現実の世界ではしょっちゅうあることとはいえないけど、でも、ときどき起こります。奇跡は人に希望を与えます。でも、ここまで大胆な価値変換は、現実で起こるのは難しいですね。
 やはり人はときどき、「よくできた嘘っぱち」に触れる必要がある、と思わさせてくれる作品です。心をリセットするために。

  さて、この話は時代劇で、みんな長い裾をひきずっているわけですが、『ラン・ローラ・ラン』のトム・ティクバ監督によって、お得意のCGを使ったスタイリッシュな映像になっていいます。『マリー・アントワネット』もそうですが、コスチューム・プレイを、現代的な音楽や映像で軽やかに見せる手法が、今後増えてくるかもしれません。

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by ropponguimovie | 2007-03-04 00:28

今週、いちばん癒せる映画vol.11『さくらん』

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 今週おすすめの映画は、蜷川実花監督、土屋アンナ主演で吉原の花魁を描いた作品『さくらん』なのですが…、いきおいあまって、昨日、えんえんと、自分のもう一つのブログに書いてしまった…。「自分の性をコントロールすることを覚えた女=手練手管と、最後にたどりつく癒し」論については、こちらを見てね。
http://blog.livedoor.jp/isl/archives/50921294.html

 しかし、この『さくらん』については、いっぱい書きたいことがあるので、メルマガでは、別の観点から解説したいと思います。

 うーん、実は、女性監督が撮ったこの映画が、ストーリー的には『SAYURI』とけっこうかぶちゃってることが、最初は納得いかなかったんですよねー。
 
 でも、昨年、アメリカに行ったとき、ちょっと考え直しました。

 アメリカ人、ゲイシャ、好きです。特に、ヒスパニックの人、ゲイシャ、好きです。少ないサンプル数だから言い切れないけど。
 でも、日本人と見るやいなやゲイシャの話をしたがる(男も、女も)、あれは何なんだろうと考えて、ふと思った。

「聖母信仰(カトリックの特徴)とゲイシャ信仰は、近いところにある?」

 あるいは、「ゲイシャ・ストーリーは、女版『ベン・ハー』である?」

 つまり、「人間性を否定されるような場所に押し込まれても、聖なる部分をを失わなかった人」

「聖母マリア=子ども生んでも処女性を失わなかった人」

「ベン・ハー=奴隷に売られても高潔な魂を失わなかった人」

「ゲイシャ=性的自己決定権を失っても、高貴さを失わなかった人」

 それって、憧れじゃないですか。私たちは、奴隷とか女郎に売られなくたって、すぐ、高潔な魂を失うじゃないですか。

「親を安心させようとして銀行員になったけど、借り手に尊大な態度とらない人」

「お金持ちだけど問題をお金で解決しない人」

 そういうのになるのって、とっても難しいじゃないですか。

 だから、「ゲイシャ・ストーリー」というのは、一種の神話なのだと。そういう人が現実に生きていたら、ますます畏怖の対象になるだろうなあ、と思ってしまうのでした。

 話は変わりますが、このストーリーの後半、「しげじ」ちゃんという女の子が登場します。しげじは、主人公きよ葉の禿(かむろ=女郎になる前の見習いの少女で、一本立ちした女郎の付き人のような役割をする。女郎は自分の給金から、食費などの面倒を見る)で、女郎になる運命に徹底的にさからったきよ葉とは対照的な女の子です。
 いつも素直で、ポジティブ。「きよ葉姉さんが面倒見てくれるから、寂しくない」といって、泣かせます。郭の下男、清次が落ち込んでいたりすると、ずっと年上の清次に「お食べ」といって、菓子を差し出したりする、やさしい女の子です。
 しかし、幼いしげじには、幼いなりにして実に着いた信念があります。
 映画の中で、「金魚」が効果的に使われています。金魚は、女郎たちのメタファーです。当初、きよ葉が女郎になる運命に抵抗していた頃、当時のトップ花魁だった粧ひ(菅野美穂)は、「金魚は、びいどろの中でしか生きられない」と言ってのけます。「金魚を川に放すと、三代でフナに戻ってしまう」と。この映画は、このテーゼに逆らうきよ葉の心の旅のストーリーです。
 しかし、映画のラスト近く、きよ葉が重大な決断を下した後に、しげじは、水槽を飛び出してしまった金魚に語りかけます。「ばかだねえ、お前、お前はびいどろの中でしか生きられないんだよ」と。

 しげじは、ばかな子ではないと思うのです。しげじは、いわれるがままにそうなったのではなく、きよ葉とは別のサバイバル手段として、この命題を受け入れることを選んだのだと思う。彼女には彼女なりの自我があるのです。
 でも私、しげじを見ているとちょっと怖くなります。
 本当は、きよ葉が正しいとかしげじが正しいとかそういう問題じゃなくて、「身売り」という制度がなくなることが社会のインフラとして整備されてないとまずいんじゃないかと思うんだけど。そういう目をもっていないと、なんでもしげじみたいに解決しそうです。「今が幸せです、ありがとうございます」とかいって。

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