『ウォ・アイ・ニー』

 中国第六世代、チャン・ユアン監督作品。男と女の人間関係にリアルによった「超個人的映画」が中国映画で作られたのは画期的だと思うが、個人的にはリアルすぎて俗っぽくなってしまった印象。

06年3月 東京都写真美術館ホールにて公開

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# by ropponguimovie | 2005-11-29 11:09

『CRASH クラッシュ』★★

『ミリオンダラー・ベイビー』で脚本を書いたポール・ハギス(カナダ人)による初監督作。年末に突然飛び込んできた今年のベスト1。っていうか、生涯のベスト3には入ってきている予感。

 交通事故をきっかけに連鎖反応を起こす、さまざまな人々の運命…という説明じゃほとんどわからないこの映画の良さ。そろそろ映画に「アカデミー賞、最有力!」という宣伝が踊る季節ですが、あまり賞に興味がない私でも、「これはとるかもしれないな」いや「とってほしいな」と思わされた作品。

 人種差別がテーマだが、弱者が強者を告発するという映画ではなく、群像劇としてすべての人間の弱さ、よさ、面白さを描き出している。そういう私は好きだ。そして、いくつものストーリーがが複雑にからみあっている、物語の構築力にもなみなみならぬものを感じる。

 個人的に好きだったのは、マット・ディロンとブレンダン・フレイザー。ブレンダン・フレイザーは、『愛の落日』でも思ったけど、けっこう作品選んでますねー。

2006年正月第2弾(たぶん2月)シャンテシネ、新宿武蔵野館他で全国公開

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# by ropponguimovie | 2005-11-29 11:08

『ホテル・ルワンダ』★◆

 ついに公開決定。1月6日には、モデルとなったポール・ルセサバギナ氏を迎えて、公開試写会とシンポジウム『今、アフリカで何がおこっているか』も行われるそうです。

 見ながら思ってしまった。「国連平和維持活動軍は必要だ」。「日本は侵略される前に列強の仲間入りをしておいてよかった」。つまり、それだけ命が惜しくなってしまったということです。こんなことで殺されたんじゃ、たまらん。そういう状況をこの映画はガンガンついてくる。

 いろいろな「甘い常識」が覆される。たとえば、「自然のなかでは、人は癒される」といったキャッチ・コピー。でもここでは、コンピュータもインターネットもビデオ・ゲームも携帯電話もないのに、やっぱり「命の大切さ」なんてお題目がふっとばされる。「戦争の大義」。でもここでは、「自由と民主を」といった、戦争の大義を作るだけ、ブッシュはましな気がしてくる。「ニクイ、ゴキブリは殺せ。ゴキブリのツチ族は殺せ」。それだけ。で、10日間で100万人。

(注・友だちにこの話をしたら、でも、あんなふうに直線で国境線をひいちゃったりしたら、その時点で「アフリカの自然」というのは壊されているんじゃないの? といわれた。あれのおかげで磁場みたいなものが壊れてしまっているんじゃないかと。するどい指摘だ)

 ポール・ルセサバギナ氏の「特殊性」が物語の奇跡である。彼は、ベルギー・サベナ航空が経営するホテル・ディプロマトの総支配人であったわけだが、ベルギー系の企業でルワンダ人がここまで出世した例はないという。
 このへんは映画としてのフィクションであったのかもしれないが、最初、彼は、家族を守るために名誉白人であろうとした。「何かあったとき自分と家族を見逃してもらうため」軍上層部などへの賄賂もぬかりなかった。しかし、アフリカ人だという理由で、彼らが国連から見捨てられたとき、彼の何かが変わる。

 上記の友人は、この1年、イタリアに留学して、イタリア人の陽気さ、ラテン気質をたっぷり吸収して帰って来た。この映画にはイタリアは直接かんではいないが、チョコレートと精密機械の国ベルギー、自由と芸術の国フランス…といったような国々が、当然のようにアフリカを支配していた後遺症が、このようにアフリカを今も苦しめている。(フランスはでも移民や難民をちゃんと受け入れているから暴動が起こるんですけどね。それすら受け入れない日本を「問題がない」とするのは間違いである)今回フランスで起きた暴動事件は、ルワンダの先にあったものといえるかもしれない…あー、なんか、無責任な他人事書いてる。もっと、がつんとしめたい何かが必要だ。自分と直結する何かが。でも、うまく思い浮かばない。

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# by ropponguimovie | 2005-11-18 02:02

『ルー・サロメ 善悪の彼岸』ノーカット版 ◆

 『愛の嵐』の監督って女だったのね…(不勉強)。そのリリアーナ・カヴェーニ監督(1933年生まれ。現在はオペラ演出家としても活動)が、『愛の嵐』(1974)の3年後(1977)に撮った実在の人物、ルー・サロメをモデルに撮った作品。日本初公開は1985年。今回は、無修正にくわえ、英語版でも下着を着ていたシーンなどが全裸に変更されている。

 うーん、お見事。面白すぎました。ルー・サロメはロシア生まれ。ペテルブルグで哲学を学んだ後若いときから西欧に出、一流の知識人と交流し、数多くの著作をものす。男との知的交流の歴史=男からの求婚の歴史。「結婚は精神の牢獄」と断り続けるも、数学者カール・アンドレアスに「結婚してくれなければ腹を切る」と本当に腹を目の前で切られ、結婚。しかし夫との同衾は拒み、自分の人生を突き進むが。
 本作は、なかでも、「聖なる三位一体愛」のパートナーであったニーチェ、パウル・レーとの関係を中心に描く。ほかにも、マーラー、リルケなどいろいろ出てくる。

 何がすごいって、ルー・サロメの自己統制のききっぷり。伝統的な生き方に反旗をひるがえし、ふたりの男を愛したりすると、かならずその女の中の罪の意識が無意識のうちに彼女を苦しめ、最後は破滅にひっぱられてしまう、というのが定石なのだが、(『トリコロールに燃えて』『ノーマ・ジーンとマリリン』など)ルーはまったくそんなことがない。自分の道を突っ走り、全然ぶれない。かわりに、周りの男たちが次々壊れていく。でも、本人はまったく無傷なのだ。精神を病んでしまうニーチェ、アンドレアとの結婚に絶望し、場末の酒場で飲んだくれているところを、労働者達のリンチを受けて殺されてしまうパウル・レー。「ハラキリ」を知っていたのか知らずか、包丁で自分の腹をかっさばくアンドレア。それでも、彼女は男たちの屍を乗り越えて、前に進んでしまう。

 ファック・「行過ぎたジェンダーフリー」。そんな道徳主義者を、この作品は鼻でせせら笑う。それどころか、ジェンダー・フリー嫌いの例えば石原慎太郎なんかを、この作品は絶対に酔わせてしまう強さをもっている。それぐらい、ルーが殺人鬼的に魅力的なのだ。本当のラディカル・フェミニズムというのは、もはや悪魔的であり、だからこそ右翼の耽美派とも似てくるのである。ああ、三島もこの作品、好きだろうな。
 精神を病んだニーチェの頭の中が具現化される、全裸の男ふたりによる、バレエのシークエンスなんかもすごかった(えんえん5分ぐらいあったと思う)。あんな絵柄撮れる人、撮ろうと思いつく人、もう誰もいない。今のフェミ監督たち、ずいぶん去勢されちゃったものだ。

 現代の目から見ると、ルー・サロメが決して色っぽくないのも新鮮だ。『トリコロールに燃えて』のシャーリーズ・セロンなんかの方が、よっぽどコビコビしていたのに対し、ドミニク・サンダは顔立ちはもちろんととのっているものの、化粧っけもあまりない(『ピアノ・レッスン』のホリー・ハンターのような感じ)。つーか、ほとんど笑わない(ファム・ファタールなのに!) いつも本を書いているようなこむずかしい顔をしていると、男がどんどん寄ってくる。なんか、上野千鶴子さんを思い出しちゃった。上野さんって、絶対男にもてるだろうと私は思うのだが(実際会うと、まぶしいぐらいのオーラが出ている)、やせていて、笑わなくて、そして着ているものはものすごく凝っている。哲学女のエロス。

 映画見て、思いました。「女が完璧主義で、どこが悪い!」知でもいけるところまでいって、美でも、恋でもエロスでも、いけるところまでいって、何が悪いのでしょう。私も頑張ろうと思いました。きっぱり。

2月下旬 新宿K’s cinema他にて全国公開

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# by ropponguimovie | 2005-11-18 01:29

『博士の愛した数式』★

 『雨あがる』『阿弥陀堂だより』の小泉堯史監督最新作。原作は小川洋子のベストセラー。小泉監督、絶好調だ。「日本が世界に誇れる監督」といった、私は文句なしにこの人。

 誇れる理由「日本の良さ」=秩序の美しさでなく、自然の美しさ。→アニミズムを感じさせる自然描写。そういう意味では宮崎駿監督にも匹敵(トトロ的?)。小泉監督の作品は、ストーリー的にはまったく違うが、この綿密な自然描写は常に共通。

 小川洋子、今まで細部の描写にひかれながらも、おおまかなストーリーにはいつもイマイチ乗り切れなかったが、この構築はすばらしい。太陽のような女と月のような女。命を産み落とした女と殺した女。愛することがめぐみだった女と愛することが罪だった女の対象劇。槇村さとるの『おいしい関係』に類似(百恵と加奈子の関係)。

2006年新春第2弾公開。

(追記)
 同じ数学がテーマだが、数学、という点をとってみれば、同時期公開の『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』より、こっちのほうがずっとよい。あちらは、実は、数式そのものの描写が全然ないため、肝心の、父と娘が命をかけるほどだった「数学の美しさ」が全然伝わってこないのだ。しかし、『博士~』を見たら、かなりの文系人間でも、数学の神秘的な力や芸術性が伝わってくるはず。ちょうど、料理の映画なのに、一方は料理が心からおいしそうに描かれ、もう一方は、「うちは料理、本当は苦手だから」と避けて描いているような対比がある。しかも数式は料理と違って直接カメラで追えるものではないのに、映画としてきちんと描けている点がすばらしい。
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# by ropponguimovie | 2005-11-11 00:47

『オリバー・ツイスト』★◆

 ロマン・ポランスキーが製作費80億円をかけて作った(ヨーロッパでは最大だろう)最新作。チャールズ・ディケンズの小説の映画化。オリバー役に11歳で監督の心をつかんだ主演のバーニー・クラーク、「文学史上もっとも物議をかもした悪役」フェイギンにベン・キングズレー。この二人と、オリバーの兄貴分ドジャーを演じた当時14歳のハリー・イーデンの演技が圧巻。

 原作のある話なのでややネタばれになるが、最後にオリバーがフェイギンにいう、「一緒に神に祈りましょう。赦しを請いましょう」というセリフは、原作にもあるのだろうか?
 この作品はポランスキーが「子どもたちのために撮りたい」といって作った作品だが、そういう作品の中に、キリスト教倫理が強くもちこまれた作品が目立つのだ。11月公開のダニー・ボイル監督の『ミリオンズ』とか、1月公開の『リトル・ランナー』とかね。

 しかしこの作品では、「おいおいまたか」という感じはしなかった。オリバーという少年は現実には絶対ありえない、むしろ漫画的なまでに純粋無垢な少年なのだが、こうした少年の造形は、今、私たちが本当に見たい、「神に近い存在」「私たちを神につないでくれる存在」の具現化だと思う。そういう存在って、今、宗教、宗派を超えて必要な存在だと思うのだ。
 だいたい、ポランスキーってキリスト教徒じゃないよね?

2006年正月第2弾公開
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# by ropponguimovie | 2005-11-08 00:29

『プライドと偏見』★◆

 話題作の予感で見に行ったキーラ・ナイトレイの最新作だが、大問題作で面白かった。原作は(見よう見ようと思っていない作品である)『エマ』の原作者でもあるジェーン・オースティン。1775年生まれ、1817年没の女性作家で、彼女が21歳のときの作品である。今ちょっと気になって(『オリバー・ツイスト』の評を書こう書こうと思ってのびのびになっている)チャールズ・ディケンズの生没年を調べたら1812~1870 年、なので、彼より古い。『若草物語』のルイザ・メイ・オルコットが1832-1888 なので、彼女よりも古い。(参考、ウィリアム・シェークスピアの生没年は1564-1616)。
 …とすると、彼女の作品はシェークスピアによって確立されたエンタテインメントを踏襲しつつ、(男と女のさやあて物語であることは間違いない)ディケンズ以下近代の物語に不可欠な「リアリティある物語の中で霊的成長をとげていく」姿が描かれ、さらに、女性に相続権がなかった当時の家族制度をしっかり風刺もしている。うーむ、注目すべき作家である。

 「姉妹の物語はすべからく4姉妹だ」といっちゃった後にすぐ出てきた5姉妹の物語なのだが、スポットは上の娘二人に強くあたっているので、実は「姉と妹」の物語といってもいいかもしれない。そして、妹であるところの次女をキーラ・ナイトレイが演じているが、勝気で一家の家長的役割を演じているのは、「若草物語』のジョーそっくり。そして、髪をブルネットにしたキーラ・ナイトレイが、『若草物語』でジョーを演じた頃の、あのみずみずしかったウィノナ・ライダーにそっくりなのだ! 家の中で男であろうとして戦う女は美しい。ウィノナやキーラはその道を歩んでいる。ウィノナはこけたけど(私はファンです)。

 追記…TBしてくださった方の投稿に、「ブリジット・ジョーンズはこの作品が下敷き」と書いてありました。へーなるほど。ブリジットは家のために戦ってないけど、嫁入り先をしきりたがるお母さんが似てるかも。

2006年1月14日、有楽座ほか東宝洋画系にて公開
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# by ropponguimovie | 2005-11-08 00:09

2005年11月第1週に見た映画

★はおすすめ印
◆は誰にでも勧めるというのではないが、個人的には問題作だと思っている印
□は、すごく期待していたのに、裏切られた~(怒)という印

『ビリーブ』★◆
 この映画はあなたの魂を変える。
 長文投稿はこちら。TBもそちらにお願いします。
 2006年1月、渋谷シアターイメージフォーラムにて公開

『リトル・ランナー』★
 昏睡状態の母親に奇跡が起きることを祈ってボストン・マラソンに挑戦する少年の物語。
 王道、直球、ど真ん中でまったくひねりはないが、きっちりしんみりさせてくれる。
 2006年正月第2弾 Bunkamura ル・シネマ他全国順次公開

『ディア・ウェンディ』◆
 ラース・フォン・トリアー脚本、監督に若手のトマス・ヴィンターベア、主演に『リトル・ダンサー』では少年だったジェイミー・ベル。公式サイトでも流れているが、ゾンビーズの『ふたりのシーズン』が似合いすぎ。
 12月上旬、シネカノン有楽町、渋谷アミューズCQN他で公開
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# by ropponguimovie | 2005-11-06 00:26

『ザ・コーポレーション』(おすすめ★)(問題作◆)

 久しぶりに試写を2回見た映画。また、10月5日、カナダ大使館にてジェニファー・アボット監督にインタビューもしました。記事に書けなかったことも含めて。

 この映画で一番驚くべきことは、製作資金のかなりの部分が、国(カナダ)の国立映画制作庁からの助成金であることだろう。こんなに企業名を実名でバンバン出して、その企業の違法行為や反人道行為をバシバシ告発しちゃう映画に、国ががっちりお金を出して、さらに日本での公開にあたってはカナダ大使館が公開を全面サポートなんて、アメリカ合衆国や日本じゃちょっと、考えられないもの。カナダというのは税金が高い分医療や教育が無料の、社会福祉の非常に行き届いた国なのだが、(ジェニファー監督によれば、スカンジナビア諸国に次ぐ二番目の社会福祉国で、国民も、その点に強い誇りとアイデンティティを感じているとのこと)「公」(決して「官」ではない)が、「私企業」に対して、しっかりとした力を持っている国だということを感じさせた。

 「映画」というよりは、「講義」のような、長い長い145分である。
 字幕が長い上、次から次へと証言者の顔が出てくるので、それが誰かというテロップを読む暇がない。映像にいくつか工夫はあるが、基本的には証言者の顔を映し出すのがメインのドキュメンタリーなので、眠いといえば眠い。しかし、その内容は、他ではつまびらかにされなかった、激しい145分である。ジェニファー監督は、記者会見で、「スタッフがカナダ人だということで、マイケル・ムーアのようなアメリカ人が作ったドキュメンタリーに比べればお行儀がいいといわれる」といっていたが、その冷静さ、緻密さがこの映画のウリだ。
 もらったプレス資料がめちゃくちゃ分厚いのだが、その裏に暗闇のなかでせっせとメモをとっていたらそれまたすごい量になってしまった。
 でも、そういうことを知っていたのと知らなかったのとでは、明日の生き方が違ってくる一本である。2004年のサンダンス映画祭で観客賞を受賞したのを皮切りに、世界の各映画祭で受賞した25の賞のうち、実に10個が観客賞なのだが、それは、「消費者賞」と言い換えてもいいのではないか。

「アメリカの衣料メーカーがエル・サルバドルに作った工場では、売値が174ドルの洋服に対し、その工賃が31セントである。その洋服のタグには、『売上の一部が、子ども達のために使われます』と書いてあるが、この洋服を縫っているのも13歳の少女なのである」
「公社より、私企業の経営の方が効率的であるという事実は、データによっては証明されていない」
「ロイヤル・ダッチ・シェルの会長、M、M・スチュワート氏は自宅前でデモを行った活動家達にお茶をふるまったが、ナイジェリアでシェルと結託した活動家8人は、軍事政権によって処刑された」
「モンサント社が開発した牛成長ホルモンはアメリカの乳牛の25%に使われているが、ヨーロッパ、日本では使用が許可されていない。投与された牛は乳腺炎を起こしやすくなり、その膿が乳に混入する。また、抗生物質も牛乳に残留し、乳がんや大腸がんにかかりやすくなるというデータもある。このような事実を報道しようとしたFOXテレビのリポーターは83回も記事を書き換えたあげく、解雇された」

 しかしまあ、このように取材に応じて画面に姿を現した企業トップはそれだけましなのかも。ジェニファー監督によると、取材を申し込んだ企業トップは60人ぐらいで、断ってきたのが40人ほど。その中にはビル・ゲイツや、英国石油のサー・なんとか(いいかげんで申し訳ない)も含まれているそうだから。

 記者会見の席では時節柄郵政民営化に関する質問も多く出たのだが、私は、この映画を見てから、privatization という言葉を「民営化」と訳したのは誰なんだろうと考えている。private = 私有、というか、その権利をもつ者以外は誰も立ち入れない領域、という意味なのだから、「民営化」はおかしい。「私企業化」とでも訳するべきだろう。(「民営」はそもそも「官営」の反対語であって、「公営」の反対語として使うのはおかしい)。「私企業化」より「民営化」の方が、ずっと口当たりが良い。誰かがその恣意をこめて訳したのだ。(話がそれるが、「ジェンダー・イクオリティー」が「男女同権」でなく「男女共同参画」と訳されたのは、「同権」では法案可決に必要な議員の票数を集められなかったからだといわれている。翻訳には政治的意図が加わるものなのだ)

 はてなダイアリーの町山智裕氏などは、同じ映画を見て「ブリトニー・スピアーズ他アメリカの少女達の乳がでかくなっているのは、モンサント社の成長ホルモンを与えた牛の乳を飲んでいるせいだ!」説を堂々とぶちかましておられたが。ありえない話ではない。

「参考になった!」
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# by ropponguimovie | 2005-11-05 23:28

『ビリーブ』★◆

 スペシャルオリンピックス(知的障がい者のスポーツの祭典)、長野を舞台にした、ableシリーズの最新作。あなたの魂を変える1本。

 今回は、競技参加だけではなくテレビクルーとなって自分達の番組を作り始めた、9人のメンバーを追う。これは、99年のノースカロライナ夏季大会の際、アメリカ、ロードアイランド州のTVクルーに小栗兼一監督が出会ったことがきっかけとなっている。
 彼らは競技会やアスリート達へのインタビューにスタジオ収録を加えた番組を、月1回、30分製作、この番組は1994年から続いているのだそうだ。小栗監督は、ableシリーズを製作中、「彼らを『被写体』という枠に閉じ込めてしまっていないだろうか? 本当は彼らも『撮る側』に回ることができるのではないだろうか?」という疑問をもち続け、ついに今回実現にいたったということなのだ。

 どうして私がこのシリーズにそこまで入れ込んでいるかというと、とにかく、私の中に根付いてしまった価値観を気持ちよく壊してくれるからなのだ。映画はあれこれ手を尽くして、私たちの古い価値観を壊し、あらなた価値観をインスパイア(新たな霊的なものとして吹き込む)しようとする。しかし、この映画のインスパイアぶりはただものではないのだ。
 彼らがインタビューについて練習するシーン。
A「今日はアスリートの○○さんにおいでいただきました。○○さん、ご感想はいかがですか?」
B「…」
A「○○さんは、ご家族は何人いらっしゃるんですか?」
B「…」
A「…以上、何も聞けませんでしたが、インタビューを終わります」
(Bさんは自閉症のため話すのが極端に苦手)

 …ありえねーでしょーよ、普通のTVでは。そこに、私たちがやってみたかったけどできなかった、という、究極の夢がありませんか? 「こうしなければいけない」という既成概念からの、究極の解放がありませんか? しかもこれ、現実。ノンフィクション。ドキュメンタリー。

 そして、こういう、「ふだん許されていないし、かっこ悪いといえば悪いけど、でも現実」というシーンの蓄積から与えられるもの。それは「信頼」なのだ。「彼らの気持ちに嘘はない」という信じる心と、それを感じることの気持ちよさ。…あ、これ書いてて、この映画のタイトルが「ビリーブ」だってこと、今思い出した。人を信じるためにはどうしたらいいのか。人を信じるためには、何をするのがよけいなことなのか。それを、映画を見ているうちに、身体を通じて学習させてくれる。インスパイア、新たな霊性として吹き込まれるものは、この、「信頼」の感覚なのだ。信頼がなければ希望も生まれない。希望がなければ脅威には立ち向かえない。

 余談だが、前回ABLE2 ホストタウンの記者会見のとき、映画に出演したダウン症の女性も出席していたのに、彼女に直接インタビューする記者は皆無で、取材はもっぱら小栗監督と細川佳代子プロデューサーに集中していた。私は、公式記者会見が終わったあと、彼女に、「先日、スペシャル・オリンピックスのサポーターであるアーノルド・シュワルツネッガーが来日したとき、花束を渡したのはあなたですか? あのとき涙ぐんでいたけど、どうして泣いちゃったの?」と質問した。
 彼女は、「他のお友だちと久しぶりに会えたので、別れるのが悲しくて泣いちゃったんです」とはにかみながら答えてくれた。なんか、ピュアでいいなあと思った。ところが、その後彼女のお母さんにその話をしたら、「あ、花束渡したのはうちの子じゃありません」といわれた。ほんとに、私が今までもっている感覚がが、思いっきりぶち壊されるのだ!

2006年1月、シアター・イメージフォーラムにて公開。
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# by ropponguimovie | 2005-11-05 11:23

SAW ソウ 2

 すっかり出遅れてるけど(10月23日に完成披露試写、監督ティーチ・インに参加)、よくできてますよね。しかもこれは、まったく違う企画として進められていたものだったそうですよ。今度も若い監督、ダーレン・リン・バウズマンがインスパイアされたのは、もちろん『バトル・ロワイヤル』だと、彼はいいきってましたけど。

 しかし、この映画の根本的なすごさって、「低予算」ということじゃないだろうか。それでここまでやれるから、この映画はえらいのです。「予算がない」という緊張感が映画の緊張感にも影響している気がする。100分間、ほんとに息つかせない映画だけど、予算がないときって、息つけないもんね。
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# by ropponguimovie | 2005-11-05 10:37

2005年10月3,4週に見た映画

★はおすすめ印
◆は誰にでも勧めるというのではないが、個人的には問題作だと思っている印
□は、すごく期待していたのに、裏切られた~(怒)という印
※は、後ほど独立して再度投稿しますので、TBはそちらにしてください、の印

『NOEL ノエル』★◆※
スーザン・サランドン、ペネロペ・クルス、ポール・ウォーカー主演の
年末恒例、というか、クリスマスもの。
12月10日、東劇他にて公開

『綴り字のシーズン』◆
リチャード・ギア、ジュリエット・ビノシュ主演、壊れていく家族もの。
脚本が、マギーとジェイクの母、ナオミ・フォナー・ギレンホール。
25年前に『普通の人々』で描かれたような、静かに壊れていく家族の世界。
そういう意味では新しさは感じないのだが、家族のつながりをある意味では
日本よりずっと大事にするアメリカ人にとって、こうした崩壊劇は、
ずっと真摯な恐さをもって受け止められるものかもしれない。

『SAW ソウ 2』★◆
「おい大丈夫か?」と思ったがとてもよくできている。前回の密室劇に対し、
今回は動きのある映画になっていて、違う作品として楽しめる。
長文投稿独立させました。TBはこちらにどうぞ。
10月29日より六本木バージン・シネマ他にて公開。

『愛より強い旅』★◆
自らのルーツであるジプシー文化を題材に映画を撮り続けるトニー・ガトリフ監督最新作。
主演は最近大人気のロマン・デュリス。
最後のナイジェリアでのトランス・シーンが圧巻。
2006年新春、渋谷シネ・アミューズ他にて公開

『プライドと偏見』★◆
キーラ・ナイトレイ主演。
原作は、19世紀の大問題作。
ブルネットにしたキーラが15年前のウィノナ・ライダーそっくりでびっくり…
そう、この「鼻っ柱の強さ」がこの映画の問題作のゆえんなのだ!
投稿独立させました。こちら。TBもこちらにどうぞ。
正月第2弾公開

『エリザベス・タウン』
オーランド・ブルーム、キルスティン・ダンスト主演、なのだが、
脇役の(母役)スーザン・サランドンがくってる気が…
主人公の映画というより、家族の映画としてみたかった。
11月公開

『風と共に去りぬ デジタルリマスターバージョン』★◆※
投稿独立させたのでこちらを見てください。
12月29日より、テアトル銀座にて公開

『力道山』★◆
東京国際映画祭クロージング・作品。
うーん、圧倒されちゃった。泣いちゃった。
とにかく力量のある映画。
いい題材にいい演出。
2006年3月公開
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# by ropponguimovie | 2005-10-30 11:29 | 見た映画一覧(簡易星取表付き)

『風と共に去りぬ デジタルリマスターバージョン』

 最初に見たのはちょうど20年前。新しいオーディオライブラリーができた大学の図書室で。私も、古典を見て「昔と見方が変わった」としみじみする年になった。

 途中休憩をはさんだので雰囲気がほのぼのしてしまって、いろいろ感想など話し合ったのだが、『風と共に去りぬ』は、歳をとって人間がまるくなるほどそのよさがわかってくる作品だとよくわかった。若くて青くてとがっているときだと、誰を見ても「いやなやつ」に見えてしまう。アシュレーは優柔不断でメラニ-はいいこぶりっこで、レットとスカーレットはもちろんワガママ(笑)。
 
 今回見てわかったのは、アシュレー&メラニ-が「善人」、レット&スカーレットが「悪人」というわけでは決してなく、むしろその「弱さ」の方向が対極的だということ。A&Mは自己主張を極端におそれる弱さがあり、R&Sは、自分も社会も許容できないということにおいて弱い。そして、わがままであるはずのスカーレットが「戦争反対」を声高に叫び、メラニ-がすすんで戦争に協力しようとするあたりも一筋縄ではいかない。

 よくこの映画を語るとき、「アシュレーとレットどちらが好き?」みたいな男キャラの比較論を聞くのだが、私がもっとも印象を受けたキャラクターはメラニ-であった。私はメラニ-って、嫌いどころか全然覚えていなくて、ようするに「つまらん女だ」と思っていたのだと思われる。しかし、私が今回見てしみじみ思ったのは、「メラニーはスカーレットのことが本当に好きだったんだ」ということ。もしかしたら、メラニーは、夫のアシュレーよりスカーレットのことが好きだったのかもしれない。だってスカーレットの方が男らしいから、という冗談はさておき、スカーレットはメラニーのなかにある欠損を埋めるものだった、と、私は思うのである。
 映画『GO』の中で、柴咲コウ演じるヒロイン桜井は、「杉原がなに人だってかまわない、ときどきにらんだり飛んだりしてくれれば。……わたし、その目、好きだった」とつぶやくが、メラニーは、おそらくスカーレットに対してそんなふうに思っていたのではないだろうか。他人の行動に自分のできなかった行動を仮託するとき、その行為はエロスをおびる。私はふたりがレスビアンぽいとは思わないが、むしろレズを越えた、本当のソウルシスターズだったのかもしれないと思う。

 20年前、正直、とにかく長くて長くてしょうがないと思った。しかし、今回はもう、あっというまという感じだった。ストーリーの面白さもさることながら、映像修整でもっとも蘇ったのが、衣装の美しさである。大恋愛映画のくせに、ヒロインのウエディングドレスのシーンにこんな時間をかけない映画もめずらしいと思うが、その、15秒ぐらいしかうつらないウエディングドレスが、見事なのだ。(サテンの布で、故ダイアナ妃が着ていたようなデコラなドレス)。例のカーテンドレスも、ベルベットが見事なだけに、それを着て金をせびりに行くところがこっけいである。

 あ、それから、まだ書いてないけど『春の雪』が思い出された。春の雪の主人公・松枝は、自分の中に「愛」があることを認めるのが遅すぎて、すべてを失い、その結果、死によって救われようとする。ところがスカーレット・オハラは、やはり同じようにしてすべてを失うが、タラの地に戻って、そこで再び生きようとするのだ。この差は何なのだ? それは性差なのか?

12月29日より、テアトル銀座にて公開
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# by ropponguimovie | 2005-10-27 17:14

2005年10月第1、2週に見た映画

◆は誰にでも勧めるというのではないが、個人的には問題作だと思っている印
□は、すごく期待していたのに、裏切られた~(怒)という印
※は、別にあらためて投稿しますので、TBはそちらにしてください、の印

『ドミノ』※
トニー・スコット監督。キーラ・ナイトレイ主演。10月22日公開

『秘密のかけら』
アトム・エゴヤン監督。 正月第2弾

『オリバー・ツイスト』★◆※
ロマン・ポランスキー監督 正月公開

『親切なクムジャさん』◆

『タブロイド』★◆
正月第2弾公開

『コープス・ブライド』 ★◆※
ティム・バートンのストップモーションアニメ 10月22日公開。

『インサイド・オブ・ディープスロート』◆
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# by ropponguimovie | 2005-10-22 11:16

不具合のお知らせ

 excite ブログの「カテゴリ設定」から新しいカテゴリを作ることができなくて、
 「2006年正月映画」のカテゴリが作れず、みんな「2005年秋公開」になっています。
 設定できしだい、なおします。
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# by ropponguimovie | 2005-10-02 10:15

『ロード・オブ・ドッグタウン』★◆

 『サーティーン あの頃欲しかった愛のこと』のキャサリン・ハードウィック監督が、「みじめなダメダメな女」映画だけしか連れないわけではないことを証明した。しかも男が主役の青春映画だ。
  70年代のスケートボードブームの火付け役となった実在の伝説的ボーダー、ジェイ・アダムズ、トニー・アルヴァ、ステイシー・ペラルタの火花散る友情を描く。実際に当時仲たがいしてしまった彼らは、この映画の製作を機会に再び友情が始まったそうで、映画も、それにリンクした、「たんなる危ない少年たち」ではない希望を感じさせる終わり方になっている。
 3人のキャストがカリスマ性たっぷり。レオさまの若いときかと見まごうエミール・ハーシュ、アフリカやヒスパニックのバックグラウンドが香るセクシーなヴィクター・ラサック、『エレファント』の美しすぎた殺人少年、ジョン・ロビンソン。
 
 ちなみに製作総指揮は、すっかり映画を撮らなくなってしまった、でも、「怒れる大人になれない(美しい)少年」を描かせたら天下一品のデヴィッド・フィンチャー。

2006お正月、シネマライズにて公開
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# by ropponguimovie | 2005-10-01 18:29

『TAKESHI’S』◆

 ゴダールかカフカかたけしか、って感じになってきた・・・が、カフカと今回のたけしはよく似ているかも知れない。
 映画の中で分裂するふたりのたけしは「過適応な自己」と「不適応な自己」である。それって、まさにグレゴリー・ザムザじゃない? 昨日までの有能なサラリーマン。そんな自分をどうしても肯定できない、いもむし的自己。(映画の中にもいもむしのイメージが何回も登場する)。
 たけしは究極の照れ屋である。彼にどんなに「自分の感情を素直に出していいんだよ」といっても、それをすることはもう無理だろうと思う。
 たけしは、成功すればするほど、「足立区のはなたれびんぼうこぞう」であった自分を捨てることができずに大事にしてしまう。しかし彼が「はなたれびんぼう小僧」を描いたとき、自分の中で「過去」であったものが、現代の不適応な人々の姿を描いているところがおもしろい。
 もしかしたら、たけしは、今でも「自分がこんなふうに成功できず、役者を夢見てコンビニ店員をやっているおじさんである」という夢を見てうなされることがあるのかもしれない。しかしスクリーンに映っている彼の姿は、北野武でもなければビートたけしでもない、「昨日まで引きこもりして、今日、やっと社会復帰してコンビニで働きはじめた、50過ぎても結婚の経験もない、おじさん」といういでたちなのだ。勝手な想像だが、母親と同居している感じがする。

  難解な映画といわれているが、それでもこの映画ですぐわかることは、こあの清純派だった京野ことみががしがし脱いでたこと。そして、その顔が細川ふみえそっくりになってたこと。宇宙の法則を見た気がした。
11月松竹系全国ロードショー

(公開後の追記… 「ブランチ」にたけし監督が出演、「とにかくお客さんが入ってくれれば何でもいい」みたいなコメントを、(たけし的アレンジをつけて)していた。他に稼いだお金で赤字の仕事しちゃう人って、他にたくさんいると思うけど。エロ本いっぱい売って赤字の芸術本出版している出版社の社長とか、大赤字の全国ツアーやっちゃうユーミン夫妻とかいるけど、たけしはそれじゃ気がすまないのね。
 なぜだろう。それは、たけしのいうとおり、「この映画はクソみたい」だからだ。ここで「クソみたい」というのは、映画というのはコミニュケーションすることが前提なのに、コミュニケーションになっていないからだ。
 実をいうと、私はその気持ちが少しわかる。「自分の思うままに」文章を書くと、コミュニケーションですらないクソみたいなモノローグが出てくることは、ままあるのだ。クソというのが適切な表現じゃなければ、「猫の毛玉」かな。相手に何かを伝えたくて書くわけだから、ふだんは全力を尽くして(かつ自己犠牲にもならないように)あれやこれやと手をつくす。でもその「燃えカス」みたいなもの「コミニュケーションなんかしたくないもん! いやいやえん」みたいな自分が、お腹の中にたまってきて、ときどきふっと出したくなるのだ。
 本当は、それをそのまんま、開き直って出しちゃえばいいのにね。でも、そうじゃなくて、「クソみたくてごめんなさい」といっちゃうから、こういう映画ができちゃうんだろうと思う。不適応と過剰適応の狭間で揺れるのは、つまるところ、映画の中のたけしだけじゃないのだ。)
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# by ropponguimovie | 2005-10-01 18:26

2005年9月第5週に見た映画

★はオススメ印
◆は誰にでも勧めるというのではないが、個人的には問題作だと思っている印
□は、すごく期待していたのに、裏切られた~(怒)という印

『ロード・オブ・ドッグタウン』★◆
  『サーティーン あの頃欲しかった愛のこと』のキャサリン・ハードウィック監督が、「みじめなダメダメな女」映画だけではないことを証明した。(…投稿独立させました。TBもこちらにしてください。) 
2006お正月、シネマライズにて公開。


『ブレイキング・ニュース』
 ケリー・チャン主演。ちょっと思考停止です。ごめんなさい。
 12月3日より シアターN渋谷(旧ユーロスペース)、新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋

『奇妙なサーカス』
 伝説の詩人、園子温がナルシシズムだけで作ったような作品世界。あぶないあぶない。
 10年ぶりに復帰する宮崎ますみのはじけっぷりがただものではない。杉本彩が見たらくやしがるだろう。
 2005年12月 新宿トーアにて公開

『TAKESHI’S』◆
 ゴダールかカフカかたけしか、って感じになってきた・・・が、カフカと今回のたけしはよく似ているかも知れない。・・・続きは投稿独立させたのでこちらを見てね。TBもそちらにお願いします。
 11月松竹系全国ロードショー


『幸せなら手を叩こう』□
 田波涼子(日本のカリスマモデル)、岩堀せり(左に同じ)、岡元夕紀子主演の恋愛映画。、「そのファッションセンスにも注目」だそうだが、3人がずーーーーーっとキャミソールを着ているという印象しかない。衣装というのはキャラクターだけでなく、心理描写のための小道具なのだが。「30代の女性に徹底リサーチ」して作った映画だそうだが、リサーチをそのまま描きすぎていて、登場人物がバカに見える。リサーチ相手が言語化しない部分を監督がおぎなってこその劇映画でしょうが。
11月19日より渋谷シネクイントにてレイトショー
 
『イノセント・ボイス 12歳の戦場』★◆
 『亀も空を飛ぶ』も越えるかもしれない、エルサルバドルでの少年兵(12歳になると政府軍に徴収される)を描いた映画。14歳のときにアメリカに脱出、UCLAを経て映画界に入ったオスカー・トレスが自らの体験をもとに脚本化。とんでもない話が次から次へと出てくるが、書いてしまうにはもったいない。ぜひ劇場にて。
 主演の11歳、カルロス・バデジャをはじめとする子役と音楽がすばらしい。
2006年お正月第2弾公開

『イン・ハー・シューズ』★◆
 トニ・コレット(姉)とキャメロン・ディアス(妹)のシスター・フッドの物語に、シャーリー・マクレーンのおばあちゃんというスパイスつき。キャメロン・ディアスがその風貌を生かして「イケイケ、ないスバディだけど読書障害」といううまい役どころを演じる。
 『L.A.コンフィデンシャル』『8mile』の監督、カーティス・ハンソン、製作にリドリー・スコット、『エリン・ブロコビッチ』の脚本、スザンナ・グラント、そして『キューティ・ブロンド』『シャル・ウィ・ダンス? (米国版)』の衣装デザイナー、ソフィー・デラコフと、いい仕事をするスタッフが揃って、彼らの得意な「泣き」を存分に見せている。

 11月12日、有楽座にて公開

(追記…「自己評価の低い女は才色兼備でいたがる」と書いたことがあるが、この物語は「才な戦略をとる女」と「色な戦略をとる女」の葛藤の物語である。でもこの映画は、両方を埋めようとすることでなけなしの自己評価を上げようとする女ではなく、両方を得て輝こうとするふたりの女を描いている。私は、妹がフロリダに来て成功する新しいビジネスが好きです。)

『ザ・コーポレーション]』★◆
 映画というより講義みたい。カナダの環境活動家が、現代の支配するもの・・・「企業」とは何かを徹底的にリサーチするドキュメンタリー。現代のアメリカが陥っている「軍産共同」の背景も、その日本への影響も、よく見えてくる。これ見るのと見ないのとでは、明日の生き方が違ってくる一本。
 長文再投稿しました。こちら。トラックバックもそちらにしてください。
 12月、UPLINK FACTORYにて公開。
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# by ropponguimovie | 2005-10-01 00:24 | 見た映画一覧(簡易星取表付き)

2005年9月第4週に見た映画

★はオススメ印
◆は誰にでも勧めるというのではないが、個人的には問題作だと思っている印
□は、すごく期待していたのに、裏切られた~(怒)という印

『MASAI』◆
 構想12年、撮影時間2000時間をかけて本当にケニア・マサイ族の人たちの演技を撮った、若者のロード・ムービー。
 彼らは本当に美しいのだが、西洋風の演技(フランス映画だが、筋書き的には結構ハリウッド的)をしてしまったことが、いいことか悪いことかちょっと答えが出ない。それより、もっと彼らの肉体のポテンシャルとかを見たかった気がするけど…(走るシーンはとにかくきれいなのだ!)
 06年正月公開


『ある子供』★◆
 『息子のまなざし』のダルデンヌ兄弟の新作。今回は、就職難のためニートであることをやむをえず、子供ができるが父性なんか全然育たず、犯罪にどんどん落ちていく
 なぜ仕事するのか? 仕事から得る有力感のほうが、社会的責任より先なんだ、ということをきちんと描いた秀作。ラストも良い。
 お正月 恵比寿ガーデンシネマにて公開

『もっこす元気な愛』★◆
 『妻はフィリピーナ』『ファーザーレス』の寺田靖範監督新作のドキュメンタリー。熊本で脳性マヒを抱える青年が、恋人と、その母親に結婚の説得をする姿を軸に話が進む。主人公倉田さんの人柄に魅了される。しかし、今更ながら、障害者を取り巻く環境は厳しい…
 12月17日 ポレポレ東中野ほか、全国順次公開
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# by ropponguimovie | 2005-09-23 10:42 | 見た映画一覧(簡易星取表付き)

2005年9月第3週に見た映画

★はオススメ印
◆は誰にでも勧めるというのではないが、個人的には問題作だと思っている印
□は、すごく期待していたのに、裏切られた~(怒)という印

『ポビーとディンガン』★
『ミリオンズ』★
 詳細は作品評を見てください。どちらも監督の子どもへの暖かい視線が感じられる、ハートウォーミング系。

『四月の雪』
 ご存知ぺ・ヨンジュン主演。
 「ラブ・ロマンス」というより、「身近すぎるホラー」という気がした。だって、自分に隠れてい不倫していた妻とその男(こっちも既婚なのでダブル不倫)が一緒に交通事故で意識不明になっちゃうんだけど、携帯だのデジカメだのに、いっぱい不倫の証拠残しているの。それを、残された者同士で確認しなきゃいけないの。
 これ見て、「ええっ、夫(妻)があんなことしてたらたまらない」って思う人と、「どき、自分の携帯見られたらどうしよう」って思う人と、どっちが多いんだろう? 携帯が普及している国の人は、みんな「どき」としたりして(笑)。

『ダウン・イン・ザ・バレー』★◆
 エドワード・ノートン、エヴァン・レイチェル・ウッド(『サーティーン あの頃欲しかった愛のこと』)、ローリー・カルキン(カルキン家の末弟)が描く、アメリカ郊外都市の狂気。超お薦め!!
 
『蝉しぐれ』★
 『たそがれ清兵衛』から続く藤沢周平原作のなかで、ダントツに良かった。人情ものであるが、推理小説なみに練りあげられた構成力に感服した。きりりとした武家の女性姿の木村佳乃が大変にキレイ。

『私の頭の中の消しゴム』
 これもベタベタのラブロマンスなのだが、ソン・イェジン演じるヒロインのスジンが、イノセント若妻のようでいて、実は上司と不倫経験がある、という設定がキャラクター作りにひねりをきかせていて、マル。相手役の「韓流真打」チョン・ウソンは、松田雄作と豊川悦史を足した感じ。

『カーテンコール』
 伊東歩、藤井隆主演。昭和30年代に映画館で活躍した幕間芸人、安川修平(実在の人物ではない)をめぐる、父と娘の物語。『半落ち』の佐々部清監督最新作。
  いい話なんだけど、私はこのブログの中で、技術的なことをいうことはほとんどないんだけど、この映画に関しては、構成上の荒さが大きいと思った。前半、話に引き込まれるまでがすごく長かったし(本当に忙しい日であやうく席を立ちそうになった)、主人公と上司の人間関係なんかは、もっと冷たくしても良かったんじゃないかと思う。
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# by ropponguimovie | 2005-09-17 21:51 | 見た映画一覧(簡易星取表付き)

『ポビーとディンガン』と『ミリオンズ』

 最近のイギリス映画は、子どもが主役のいい作品が次々作られていますね。ちょっと古いけど『リトル・ダンサー』とか、最近では『ネヴァー・ランド』とか、『フル・モンティ』も子どもが良かったですよね。
 この2本は、どちらも11月公開、どちらもイギリス気鋭の監督、2本とも子どもが主役で、2本ともハートウォーミング系。

 1本目は『フル・モンティ』のピーター・カッタネオ監督の最新作、『ポビーとディンガン』。想像上の友だち、ポビーとディンガンを失ったために病気になってしまった妹と兄の交流を描く。

 2本目は『トレインスポッティング』のダニー・ボイル監督の最新作、『ミリオンズ』。ユーロへの通貨統合前夜のイギリス。母を失ったばかりの小さな兄弟のもとに、突然、あと3日しかつかえないポンドの札束がふってきた。兄はそれで投資をしようといい、弟は貧しい人のために使おうという。果たして…? こっちはほろりとさせつつ、ユーモアもきいている。
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# by ropponguimovie | 2005-09-17 21:19

『旅するジーンズと16歳の夏』

 『大の男が泣かされてしまう感動作…ワシントン・ポスト』とプレスにあるが、誇張ではない。試写室で、老年の男性がふたりほど鼻をすすりあげている姿を目撃した。私も、別の機会に予告編を見ただけで、うるっとくる…どころか、涙がすうっと頬を伝ってしまい、びっくりした。

 子どもから大人になる瞬間を、みずみずしくとらえた青春ストーリーである。母親に自殺された少女、内気で自分を表現できない少女、父親に去られ民族的マイノリティも抱える少女、自分の中の芸術的エネルギーと社会とをうまく接続できない少女。4人の少女が、「誰がはいてもサイズがぴったり」の不思議なジーンズ」にのせて、心をかわしていく。

 こういう物語は夏が似合う。夏にはすべての生き物がぐんぐん伸びる。「その夏を越えたら、もう私は昔の私ではなくなっていた」、そういうストーリーである。
 そういえば、『スタンド・バイ・ミー』って夏の話だっけ? 私はこの映画を『スタンド・バイ・ミー』の少女版として紹介したかったのだが、この作品のすごいところは、「少女版」というのが、女にしか通用しない話でなく男女を越えて、「夏を越えて、大人になる」という追体験をさせるところだと思う。

  manという言葉は人間一般を表すが、womanという言葉は女しか表さない。男を主人公としたとき、男も女も同様に共感できるのに、女を主人公にすると、「女性映画」というジャンル映画になってしまう。多くの青春映画もその例にもれず、例えば『スタンド・バイ・ミー』や『青春の輝き』『今を生きる』などを見てもちろん私だっていいと思うけど、でもやっぱり「じゃあどうして主人公が男なんだよ?」という問いは残る。これが『GO』となると「man=男」という感じしかしないし、逆に『赤毛のアン』や『若草物語』を好きな男がどれだけいるか、謎だ。

 ところが、この『旅するジーンズと16歳の夏』は、womanが主人公なのに、男にも、女にも、同様の共感を与えてしまうのだ。たぶん、その秘訣は、ロマンスが「目的」なのではなく、「青春時代の一つの輝き」という形で、つまり少年ものと同じ位置付けがあることではないかと思う。少女が主人公であっても、この映画のキーワードを考えるとしたら、「友情・努力・勝利」まさに少年ジャンプの世界である。主人公はwomanだが、感動の質は、humanなストーリーである。

10月、恵比寿ガーデンシネマで公開
(え? もっと拡大公開でもいいのに…)

追記…女姉妹(シスターフッド)の物語が古今東西を越えて「四姉妹」であることが圧倒的に多いのは、「4」という数字が、自然界の調和を表しているからだと思う。西洋でいえば、「火・土・水・風(空気)」の4つのエレメント、東洋でいえば、四季や四つの方角、色(青春、朱夏、白秋、玄冬」といった考え方。それらは、競争するものではなく、4つがどれ一つとしてかけてはいけない、互いに交じり合う世界の大切な構成要素であるという暗喩なのだ。
 西洋で言えば、この「旅するジーンズ~」、「ヤァヤァ・シスターズの聖なる冒険」、「若草物語」日本では、谷崎潤一郎「細雪」、五木弘之「四季」、向田邦子「阿修羅のごとく」、誰が作ったのか知らないが「ポッキー四姉妹物語」など、みーんな四姉妹である。
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# by ropponguimovie | 2005-09-11 15:48

2005年9月第2週に見た映画

★はオススメ印
◆は誰にでも勧めるというのではないが、個人的には問題作だと思っている印
□は、すごく期待していたのに、裏切られた~(怒)という印

『シン・シティ』
(原作のフランク・ミラーにロバート・ロドリゲス、1シーンだけクエンティン・タランティーノまで監督に参加したコミックの映画化。
 モノクロームに血の色だけ赤という映像様式を使っていなければ、ちょっとむごすぎるほどの暴力シーン。話は群像劇なので、できれば「シン・シティ」というシティ全体に姿というか人格を与えて欲しいと思ってしまったが、それは原作に描かれていないのだろうか。『バットマン』シリーズのゴッサム・シティなんか、街が生き物のように見えるのだが。キャストは超豪華)
(10月1日 丸の内ルーブル他全国松竹・東急系にて公開)

『真夜中のピアニスト』★
 『リード・マイ・リップス』の監督ジャック・オディアール最新作。ちょっとだめでヴァイオレントなお兄ちゃんの成長の軌跡を、サスペンス・タッチ、クールかつユーモアを交えて描くオディアール節は健在。
(10月アミューズCQNにて公開)

『ダーク・ウォーター』★
 鈴木光司原作『仄暗い水の底から』のハリウッド・リメイク…だが、監督を『セントラル・ステーション』『モーターサイクル・ダイアリー』のウォルター・サレスが担当。
 南アメリカ出身のサレスにとって、「奇跡」と「オカルト」は同義なのだと思う。その手腕を楽しみにしていたが、日本版にはない、ラストのカタルシスがお見事。
(11月12日日比谷スカラ座他にて公開)

『セブンソード』
 中国の大武侠映画。ストーリーは純粋なエンタテインメントだが、役者がグッド・ルッキング揃いで人的資源(?)を感じさせる。
(10月1日全国公開)

『CUBE ZERO』★
 こわいよー。
 
『頭文字(イニシャル)D』★◆
 しげの秀一原作のマンガを、『インファナル・アフェア』組が映画化(監督アンドリュー・ラウ、出演ジェイ・チョウ、エディソン・チャン、ショーン・ユー、アンソニー・ウォン)。すんごく面白かったけど、問題作だとも思っているので、それはいずれあらためて。群馬県内にエディソン・チャンがいるたたずまいはすんごくシュール。
(9月17日公開)

『少林キョンシー』□
 あんまりキョンシーが出てこないよー。長いよー。

『青い刺』★◆
 1927年、ドイツでの実話をもとにしたドラマ。主演は『グッバイ・レーニン』のダニュエル・ブリュール、『ビタースウィート』のアンナ・マリア・ミューエ(彼女は素晴らしい!)
 「自殺クラブ」なるものを作った多感な青年が、奔放な妹の恋人を射殺、自分も自殺、一緒に死ぬことを決めていた青年の親友だけが生き残った。そのいきさつを描く。
 なお、ブリュール演じる生き残った青年パウル・クランツは、後に偽名で小説を出版、1933年にこの小説はナチスに焚書扱いにされる。その後アメリカに政治亡命、ラジオ記者や編集者をつとめた。当時のベルリンの世紀末的世相を映し出した事件だといわれる。 
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# by ropponguimovie | 2005-09-10 01:04 | 見た映画一覧(簡易星取表付き)

『NANA』

 9月3日発売の「週刊金曜日」に執筆したが、とても書ききれなくて満足していないのであらためて投稿。

 映画を見てから原作を読んだ。すごい話である。人を愛する苦しみがめんめんと描かれている。主人公は男でもなく、貴種流離譚でもなく、継母を犯すわけでもないのに「源氏物語と似ている…」と思わせられたのは、各登場人物が綿密に作りこまれており、ひとりひとりの苦しみが描かれることで、物語世界が立体的になるからである。

 主人公の女性ふたり、ナナとハチは、はじめ、お互いという友情の相手を手に入れることによって、それぞれに抱えたボーイフレンドとのしがらみから自由になるように思われる。この話はカップル幻想を打ち破るかのように思われる。ところがとんでもない。男であろうと、女であろうと、「自分を完璧にわかってくれる(かもしれない)相手」を見つけたとき、人はその幻想に取り付かれ、苦しむのだということを、このマンガはじわじわと見せつける。そういう意味では、本当にジェンダー・フリーな話といえるかもしれない。男女平等って、怖い。

 なにしろマンガの中に出てくるバンド名が「トラップ・ネスト」なのだ。商業バンドにしては縁起の悪い名前だなーと思っていたが、ここにはちゃんと意味があった。本当にこのマンガは、トラップ・ネストの物語である。そこは巣だ、安住の地だと思って羽を休めてみると、わなにハマリ、出られない。みんながじわじわとトラネスに落ちていく。
 男を愛そうが女を愛そうが、子どもができようができまいが、コンドームを使おうが使うまいが、結婚しようがしまいが、キャリアをつらぬこうが男のために味噌汁を作ろうが、スターダムにのろうが地道に生きようが、女をものにしようが遠くから見守ろうが、苦しいものは苦しい。『NANA』はそういう話である。え? 違います?

 映画版の『NANA』は、原作のほんのさわりで終わる。「『大切な特別な人』は、女の子にとって王子様だけじゃないんだよ」。そういうポジティブなところで終わる。これは本当に希望のある終わり方である。もしかしたら原作の本テーマとは違ってしまったのかもしれないが、私はこの映画ができてよかったと思う。そうじゃなくちゃ、とてもやっていられませんって。そう思うぐらい、原作は苦しい物語だから。

 この時期に中島美嘉と宮崎葵がいたというのは、奇跡というほかないですね。中島美嘉以外に、ナナ役はちょっと考えられないし、宮崎葵が良かったのは、原作の、ともすれば女を武器にして生きているという反感を買いかねないハチを非常に共感しやすいキャラクターに作り上げていること。惜しいのは、松田龍平。パンクミュージシャンのあごがたるんでいてはいかん!

 マンガのキャラクターを各俳優がこれほど違和感なく演じているというのはすごいが、絶対に続編は作らないでほしい! …あーあ、公開1位とっちゃったよ。できちゃうかなあ、やっぱり。  
 
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# by ropponguimovie | 2005-09-10 00:20

『トップガン デジタルリマスターバージョン』

 大大大問題作だといっておきましょう。しかし、その焦点はトム・クルーズではなく、相手役の…覚えてますか? ケリー・マクギリスにあることを、書いておかねばなりますまい。

 『デブラ・ウィンガーを探して』という映画があったが、私にとっては、この映画は『ケリー・マクギリスを探して』である。デブラが『愛と青春の旅立ち』でスターダムにのったあと寿退社(?)してしまったことより、引退もしていないケリーがスターダムから消えてしまったことの方が問題である。

 考えてもみてほしい。『トップガン』は、トム・クルーズをスターダムに乗せた記念碑的な作品である。ケリー・マクギリスは、その相手役だったのである! それなのになぜ消える?
 そして、そのヒロインの役柄は、「ヒーローより年上で」「カッコたるキャリア(それも博士号)をもち」「背が高く(映画のなかでトムは台に乗っていると思われる箇所がある)」「髪型はセットしなくていい(だからキャリア・ウーマンのために考案された)ソバージュ・スタイル」「ひとりで一軒家に住み」「ミリタリーの服をおしゃれに取り入れる」、そういう、大人の女だったのだ!
 ケリー・マクギリスは、80年代フェミニズムのアイコンだったのである。
 
 「肩に厚い肩パッドの入った…」というのは、いつから人をさげすむ言葉になってしまったのだろう? この映画の中で、ケリー・マクギリスは、厚い肩パッドの入ったジャケットを着ている。それも、ヘインズ(アンヴィルかもしれない)のTシャツにタイト・スカート、シーム・ストッキングという組み合わせで。あのジャケットは、ほぼ間違いなくジョルジオ・アルマーニのものだと思う。先日六本木ヒルズで開かれた「アルマーニ展」で、アルマーニがいかに、「厚い肩パッド」で、80年代ジェンダー・フリーをリードしてきたか、目の当たりにさせられた。男にテロテロのジャケットを着せ、女に逆三角形のジャケットを着せて、アルマーニは性差を埋めようとした。でも、その片鱗を映画に見るとしたら、たった二つしかない。ケリー・マクギリスが航空宇宙工学博士を演じたこの『トップガン』と、強姦を見ていた野次馬を「何もしなかった」かどで訴える検事を演じた『告発の行方』と。

 そういうわけで、さっそうと肩パッドの入ったケリーが二つの大切な役を演じた後、ケリーは消えてしまい、80年代フェミニズムも消えてしまうのである。『告発の行方』は88年、 メラニー・グリフィスとシガニー・ウィーバーが演じた『ワーキング・ガール』も88年、日本で雇用機会均等法の施行が87年で、89年ぐらいになると、アルマーニは「エコロジー」とか、「アンコンジャケット」とか、いわゆる「肩から力の抜けた」路線を提案してくるようになる。バブルはもう少し上昇してから一気にはじけ、「肩パッドの入った女」は、歴史から葬り去られてしまうのだ。

 それはまあ、幸せなことなのかもしれない。今、映画に登場する「働くヒロイン」たちは、チャーリー(この映画での、ケリーの役名ね)のような美化されたスーパーな女ではなく、男と同じように仕事に疲れる女たちである)。『ニューヨークの恋人』のように王子様願望を逆手に取ったり、『ブリジット・ジョーンズの日記』のように、キャリア路線にのれない自分を自虐するような映画は、女を現実的に扱っているといえば、いえる。

 でも、『トップ・ガン』が証明した大事なことは、「頭もよく、ドーリッシュでもなく、仕事でサクセスして(しかも背が高い)ヒロインであっても、ちゃんと青春(お気楽)ドラマのヒロインになりえる」ということなのだ。

 えー、さて、実際にそのケリー・マクギリスと20年ぶりに対面した私は、驚いた。口をあんぐりあけた。最後には笑ってしまった。世界の移り変わりというものを、まのあたりにした気がした。
 この映画の中のケリー・マクギリス、結婚する前の雅子妃にそっくりなのだ!(っていうか、柏原芳江にも似ている)  ああ、やっぱり80年代にさっそうと輝いていたキャリア・ウーマンは、消えてしまったのだ。いったいどうしてなんだろう?

9月3日より、東劇他にて公開中。
 
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# by ropponguimovie | 2005-09-04 23:39

2005年9月第一週に見た映画

★はオススメ印
◆は誰にでも勧めるというのではないが、個人的には問題作だと思っている印
□は、すごく期待していたのに、裏切られた~(怒)という印

『ゲス・フー 招かれざる恋人』◆
(アシュトン・カッチャーが、黒人の婚約者の家でパパにいやな顔されて…というお話。相変わらず日本では無視されながらも、無視できない問題作に出演してます。けっこうキッツイ、ニューヨークテイストたっぷりの映画)

『理想の恋人.com』★半分
(ダイアン・レイン、ジョン・キューザック主演。バツイチ30後半男女の出会い系サイトをめぐるドラマ。
 ダイアン・レインは日本で黒木瞳が人気が出るのとパラレルに人気を得ている。でも、貞淑な妻ばっかり演じているわけではなくて、むしろ、40間近で結婚に破れ、新たな恋を得るあたりがアメリカン・キャラだと思う。
 きわどいギャグが連発されるが、これは、「オースティン・パワーズ」シリーズも製作した素残ヌ&ジェニファー・トッド姉妹の力だと思う。)

『パープル・バタフライ』
(チャン・ツィイー、中村トオル主演の、1930年代を舞台に抗日活動家と日本軍諜報部員の悲恋を扱ったドラマ。チャン・ツィイーはうまい。美貌、アクション、演技、アトラクション、全部減点のしようのない女優になってしまったのだから、ハリウッドで上り詰めるのも当然かと。
 その彼女の向うを堂々とはっているのだから、中村トオルもなかなか。英語ができればハリウッド行きもありうるかも)
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# by ropponguimovie | 2005-09-04 23:01 | 見た映画一覧(簡易星取表付き)

2005年8月に見た映画

★はオススメ印
◆は誰にでも勧めるというのではないが、個人的には問題作だと思っている印
□は、すごく期待していたのに、裏切られた~(怒)という印

『ランド・オブ・プレンティ』★◆
『フリークス』◆
『愛の掃除機』 (謎)
『奥様は魔女』★
『キャプテン・ウルフ』
『タッチ』
『ボム・ザ・システム』★◆
『トップ・ガン デジタルリマスターバージョン』◆
『亀も空を飛ぶ』★★◆
『ランド・オブ・ザ・デッド』★◆
『愛をつづる詩』
『旅するジーンズと16歳の夏』★★★(男も泣かす少女のドラマ)
『ブラザー・グリム』(謎)
『ビューティフル・ボーイ』
『がんばれ! ベアーズ』
『ベニスの商人』★
『ロバと王女』◆
『春の雪』

19日間も東京をあけていたのに、なぜか18本も見ている。本当に私のしたことだろうか?
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# by ropponguimovie | 2005-09-04 22:23

『亀も空を飛ぶ』★◆

 『酔っ払った馬の時間』で世界中を黙らせたクルド人監督、バフマン・ゴバディ監督の最新作。世界中の映画祭ですでに28の賞をとっている。今年の暫定1位。

 イラク、クルディスタンの…と解説を書こうと思ったが、複雑すぎて書ききれないのでやめる。資料には、4000の村が焼き払われたとか18万人が死亡または強制連行とか、40万人が国境の山岳地帯に取り残されたとか書いてある。


 『酔っ払った馬の時間』に続き、子供の物語。主人公はアメリカびいきの少年サテライトで、サテライトが恋してしまう少女、アグリンは14歳ぐらい。その兄、パショーは15歳ぐらいで、地雷のため、両手がない。ふたりには2歳ぐらいの弟、リガーがいるが、リガーは目が見えない。そして、バショーはリガーを思いやっているが、アグリンはりガーをしばしばかわいがらない。なぜか? この謎をめぐって、目を覆うような惨劇がさらされる。一応アグリン14歳ぐらいと推定したが、ビジュアルだけでは12歳ぐらいにしか見えないのが、もっと痛い。


 絶対に見ましょう。

 9月17日 岩波ホールで公開
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# by ropponguimovie | 2005-08-17 16:04

2005年7月に見た映画

★はオススメ印
◆は誰にでも勧めるというのではないが、個人的には問題作だと思っている印
□は、すごく期待していたのに、裏切られた~(怒)という印

『コーチ・カーター』 ★

『ドア・イン・ザ・フロア』 ◆
(ジョン・アーヴィング原作。『サイダーハウス・ルール』よりやや難解さを残している)

『そして、ひと粒のひかり』 ★◆
(社会派映画として、一人の女性のストーリーとして、独立系映画として、
 魅力ある主演女優の映画として、見所がたくさん!)

『世界』 ★◆
(先日寝てしまったため、再見。今まで見た中国映画のなかで一番面白い)

『チャーリーとチョコレート工場』★◆
(円熟期に入ったティム・バートンを、盟友ジョニー・デップが力強くサポート)

『SHINOBI』
(ポスターが妙に『キャシャーン』っぽい。狙ってるのか?)

『8月のクリスマス』
(恋愛映画、ちょっと苦手)

『メゾン・ド・ヒミコ』★◆
(犬童一心監督は、「ぶっちょうずらの女の子」を撮るのがとてもうまい。
 ゲイ役のオダギリジョーのパンツぴちぴちは、絶対その手のファンの視線を意識していると思う)

『Be cool』
(『ゲット・ショーティ』の続編。前編見てないので語る資格なしだが、トラボルタって、いるだけでいい)

『ジーナ・K』★★◆
(大掘り出し物の邦画。東陽一や橋口亮輔などの助監督を務めてきた藤江儀全の初監督作品。ストリッパー役の石田えりがすごい。黒木瞳より石田えり。黒木瞳より石田えり。)
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# by ropponguimovie | 2005-07-28 23:43 | 見た映画一覧(簡易星取表付き)

六本木シネマだよりについて

 映画を本格的に見始めたのは1997年。30歳を過ぎていましたからわりと遅いです。その直後から、映画評論家の品田雄吉先生が講師をつとめるカルチャースクールを3年間受講、先生が審査員を勤める映画評論の賞を受賞しました。その作品をもって営業に回り、現在3つの市民運動系の雑誌で映画評を書かせていただいています。

 フェミよりだし左翼よりだと思うんですが、何よりも「この映画は、私の心のどこを引っかくのか?」という視点が中心になっています。

 映画はほとんど試写室で見ているため、一般の方より情報が早いので、ネタバレは、基本的にはしていません。

 トラックバックは、あきらかに公開前に試写室で見て書いているなと思われる方以外は、こちらからはしていません(売名行為っぽい? と自主規制しちゃってるので)。 TBしていただいた方には、喜んで、こちらからもTBさせていただきます。

(追記
 外国からの迷惑TBが激しいので、現在、すべてのTBを「拒否」状態に設定してあります。コメント欄もつけてないし、ほとんど訪問者との交流がない状態ですが、今のところこれでいっています 2006.8.21)

 
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# by ropponguimovie | 2005-07-28 23:07 | 初めに読んでね