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今週、いちばん癒せる映画vol.13『パラダイス・ナウ』他

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 このメルマガは、今週公開される映画の中から、
「この映画は癒される!」という視点に絞って1本を紹介するマガジンです。

 今週は、他の週だったらイチオシ! という映画がたくさんあって、
評論家泣かせの週です。
『約束の旅路』『ラストキング・オブ・スコットランド』『サン・ジャックへの道』『絶対の愛』…

 そのうち、『約束の旅路』は、こちらに感想を書いていますので、よかったら見てください。
http://rmovie.exblog.jp/5936134/

 さて、今回の1本として選んだ『パラダイス・ナウ』、実は一昨日見た、すべりこみでした。

 なかなか時間が取れなかったのですが、ずっと気になっていました。
 試写状が、とても印象的だったのです。

 http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD10285/index.html

 こちらの写真を見ていただくとわかると思うのですが、『モッズ』っぽいというか、1997年のダニー・ボイル監督の名作、『とレインスポッティング』を思い出させますね。ちょっと、虚無的というか、生きること投げちゃってるというか。

 ところが、彼らは虚無的どころではないのです。「虚無」って、生きることが保証された環境の中で「生きることがむなしい」とかいってるから「虚無」なわけでしょ。ところがこのふたりはそもそも生きることが保証されていない。実は、この、ちょっとオシャレで、しかもハンサム(だ、と、私は思う)な二人が、実は自爆テロリストなのです。
 彼らが頭を丸め、ひげをそっているのは、ユダヤ教徒(っぽくも見えないけど、無宗教風? とにかくイスラム教徒に見えないようにする)として敵地に乗り込むため。このスーツの中に、腹巻みたいにぐるぐる巻きにした爆弾を巻きつけています。

 途中、恋人が出てきますが、彼女もとてもきれい。ヨルダンはイスラム国の中でも服装がそんなに厳しい国ではないので、彼女は髪を隠していないし、ボタンを二つあけたブラウス姿。途中、彼らの行為を敢然ととめようとする姿は、とてもりりしくてカッコイイ。「女性らしさの枠の中に押し込められたイスラム女性」のイメージを完璧に超えています。

 この映画は、自爆テロリストの決行前の48時間を描いているのですが、それが、政治的メッセージではなく、個人の人間的心情として主人公達に迫っています。

 それが、こういうスタイリッシュな映像に表れている気がします。
 つまり、この映画が、自爆テロリストの話である、というのは、「たまたま」なのですね。こういうキャラクター達を使って、まったく別のドラマを撮ろうと思えば撮れる。
 そこに、一種の救いがあるように見えるのですよね。

 話がちょっとユーモラスに描かれるところも、『トレインスポッティング』に似ています。胸にはりつけたテープの具合がうまくいかなくて、「べりっ」とはがすのですが、これが痛そう(笑)(あっちの男性は胸毛がいっぱい生えてるからね…)。
 しかし「今度からもっといいテープを使ってくれ」と文句を言うと「2度目はない」と、にべもない返事。笑えるようで、笑えないようで。

 『トレインスポッティング』は、仕事がない、という環境の中で、「死にたいけど死ねない」という感覚を抱えた若者達が、最後は、生の方向に向かうところで終わっています。そして、この映画は、「死にたくもないけど死なないといけない」という運命に巻き込まれた若者が、死なないようにとあれこれ試み、しかし、最後は…という構成になっています。

 生きる死ぬを、「政治」「国」といったシステムのレベルで語らず、あくまで個人のレベルで語っているところに、癒しというか、救いがあるような気がします。
 
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by ropponguimovie | 2007-03-09 22:32 |
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